「5-ALAのサプリって、がんの手術で使う薬と同じ成分なんですか?」——5-ALA(5-アミノレブリン酸)はミトコンドリア・エネルギー代謝系のサプリメントとして流通する一方、同じ成分が光線力学診断用の医療用医薬品としても承認されており、患者さんから両者の違いを聞かれる場面が今後増えることが予想されます。本記事では、添付文書や厚生労働省の公表情報をもとに、5-ALAの基礎知識と光線過敏のリスク、医薬品との飲み合わせで気をつけたいポイントを薬剤師の視点で整理しました。
5-ALAの基礎知識
5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、ヒトを含む生物の体内で作られるアミノ酸の一種です。体内で複数の酵素反応を経てプロトポルフィリンIXに代謝され、最終段階で鉄と結合することでヘム(赤血球中のヘモグロビンの材料)が生合成されます。5-ALAはこの経路の出発物質にあたります。ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わる経路の一部であることから、エネルギー代謝・疲労感対策をうたうサプリメントとして流通しています。
一方で、5-ALA(アミノレブリン酸塩酸塩)は国内で「光線力学診断用剤」として医療用医薬品にも承認されています。体内に取り込まれた5-ALAが腫瘍組織に選択的に蓄積しやすいプロトポルフィリンIXに代謝され、特定の波長の光を当てると赤色蛍光を発する性質を利用し、悪性神経膠腫の摘出術や経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)における腫瘍組織の可視化に用いられています。手術中に腫瘍を光らせて見やすくするための薬剤であり、外来で行うような一般的な検査薬ではありません。サプリメントと医薬品では用量も投与管理も全く異なりますが、「同じ成分」であること自体は患者さんに正確に伝えたい情報です。
光線過敏のリスク
国内で承認されているアミノレブリン酸塩酸塩製剤(アラグリオ内用剤・アラベル内用剤)の添付文書では、投与後少なくとも48時間は、強い光(手術室の照明や直射日光等)への曝露を避けるよう指導されています。同添付文書には、テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤、セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)含有食品など、光線過敏を起こしやすいとされる薬剤・食品との併用について注意喚起がされています(2022年1月、厚生労働省の指示により併用禁忌から併用注意へ改訂)。
サプリメントとして流通する5-ALAは医療用よりも低用量ですが、光線過敏のメカニズム自体は同じ成分に由来するため、理論上のリスクとして念頭に置いておく価値があります。光線過敏を起こしやすい治療薬(ニューキノロン系抗菌薬等)を服用中の患者さんが5-ALAサプリメントの摂取を希望する場合は、屋外での紫外線対策(日焼け止め・帽子等)についても一言添えられると丁寧です。
鉄との関係・過剰摂取への注意
5-ALAは代謝の最終段階で鉄と結合してヘムを合成するため、鉄と組み合わせた製品も流通しています。鉄欠乏がない患者さんが鉄配合の5-ALAサプリメントを漫然と摂取し続けると、鉄過剰のリスクも理論上否定できません。持病で鉄剤を処方されている患者さんや、鉄過剰症のリスクがある患者さん(血液疾患の既往等)には、鉄の重複摂取にならないか確認する視点が必要です。
血糖値との関連について
5-ALAと糖代謝の関連については研究が進められている段階ですが、本稿執筆時点でヒトでの効果を確立した公的なガイドライン等は確認されていません。糖尿病治療薬を服用中の患者さんがサプリメントとしての5-ALA摂取を希望する場合は、血糖値に影響する可能性を否定できない成分であることを踏まえ、自己判断で治療薬の量を調整しないよう説明することが大切です。
確認したいポイントの目安
| 患者の状態 | 確認したいポイント |
|---|---|
| ニューキノロン系抗菌薬・テトラサイクリン系抗菌薬を服用中 | 光線過敏のリスクが重なる可能性があるため、紫外線対策を案内できているか |
| 鉄剤を処方されている、または鉄過剰症のリスクがある | 鉄配合の5-ALA製品との重複摂取になっていないか |
| 糖尿病治療薬を服用中 | 血糖値への影響が確立していない旨を伝え、自己判断での薬剤調整をしないよう案内できているか |
| がんの光線力学的診断・治療を受けた(受ける予定の)既往がある | サプリメントと医療用医薬品が同じ成分由来であることを整理して説明できているか |
患者への説明トーク例
「5-ALAは体の中でも作られる成分で、エネルギー代謝に関わるサプリメントとして人気がありますね。実はこの成分、がんの手術のときに腫瘍を光らせて見えやすくするお薬にも使われているんですよ。サプリメントは量がまったく違うので心配しすぎる必要はありませんが、光に対して敏感になる可能性がある成分なので、飲んでいる間は日焼け止めなど紫外線対策を意識していただくと安心です。今飲んでいるお薬との飲み合わせが気になる場合は、いつでもご相談くださいね。」
まとめ
5-ALAはエネルギー代謝サプリとして注目される一方、光線力学診断用の医療用医薬品としても承認されている成分です。光線過敏のリスクや鉄との重複摂取、血糖値への影響など、確立していない部分を含めて正確に伝えることが、薬剤師としての信頼につながります。ミトコンドリアに関わる成分という観点では、NMNサプリの安全性とエビデンスの現状もあわせてご参照ください。
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